カート・コバーン




【概要】
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【遺書】
 聴くことにも創ることにも、もう随分長いこと興奮を覚えなくなっていた。そういったことに、俺は言葉に尽くせぬ罪を感じている。例えば楽屋にいると会場の照明が落ちて、群衆の狂ったような叫びが聞こえてきても、それは群衆の憧憬の念を愛し、楽しんでいたらしいフレディ・マーキュリーに与えたような影響を、俺には与えないんだ。
 そのことは俺が、心から尊敬し、羨まく思っていたことなんだ。
 要するに、俺は君たち誰ひとり騙すわけにはいかないんだ。
 君たちにとっても、俺にとってもフェアじやないから。この思いをごまかして、あたかも自分が100%楽しんでいるかのようなフリをするなんて、俺が考え得る最悪の犯罪だ。

 ステージに上がる前に、タイム・カードを押した方がいいんじゃないかと思う時がある。俺が、そして俺たちがたくさんの人間に影響を与え、楽しませてきたんだという事実を喜べるように、できるだけの努力はしたんだ。
 俺はたぶん、独りでないと物事を楽しめないナルシストってやつなんだ。感受性が強すぎるんだよ。かつて子供の頃に持っていた情熱を取り戻すには、もう少し鈍感になる必要がある、ここ3回のツアーでは、個人的な知り合いや、俺たちの音楽のファンを、前よりずっとありがたく思えるようになっていた。それでも俺は、みんなに対する不満、罪悪感、そして同情から脱け出すことができなかった。
 人間、誰しも長所がある。俺はただ、人間を愛しすぎるんだ。愛しすぎて、あまりにも---情けない---情けなくて、ちっぽけで神経質な、歓迎されない女々しい魚座のジーザス野郎に思えてくる。
 いい人生だったよ。本当にいい人生だった。ただ、俺は7歳の頃から人間全般に憎しみを抱くようになっていたんだ。たぶん、単純に俺は人を愛しすぎ、人の気持ちがわかりすぎるからなんだろう。今までにもらった手紙や思いやりに、焼けただれた腹の底から礼を言うよ。俺はどうしようもなく変人で気分屋だから、もう情熱を失ってしまったんだ。覚えておいてくれ。
 消え去るより、燃え尽きた方がいいんだってことを。 平和、愛、同情、カート・コバーン





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